• ミロコマチコ「ミロコあたり」

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 もうすぐ引越しをすることが決まっている。想像するだけで、早る気持ちを抑えきれない。とてもワクワクしている。だけど、大問題が控えている。猫達の移動だ。
 引越しといっても、近所ではなく、飛行機に乗って行かなければならない離島だ。うちには、2匹ずつ一緒にもらってきた計4匹の猫がいる。現在7歳の兄弟ソトとボウは、近所だけど、引越し経験が1度だけある。また、長距離を移動したこともある。現在2歳の兄弟猫、テンテンとスイカ頭は引越し未経験。保護先からうちに来た時以外は、近所の動物病院に行ったことくらいしかない。
 ソトとボウを、東京から大阪の実家に連れて帰った時のこと、車で移動したのだが、それはそれは泣きわめいて、緊張感抜群だった。高速道路に乗ると「ニャーオーニャーオー」と大合唱して、トンネルに入るとワントーン下がった「ニャーオーニャーオー」になる。実家に着くまで、永遠に繰り返されて、一生分鳴いて声が出なくなるのでは、と心配した。前回の引越しの時は2匹一緒の方が落ち着くのではと思い、同じケージに入れて運んだら、車で20分ほどの距離なのに、ボウが暴れまくって、おしっこシートをビリビリに破いてひっくり返り、それを避けるかのようにソトは奥の隅っこで小さくなっていた。
 テンテンとスイカ頭は、そもそも家族以外の人間が異常に苦手で、来客などがあっても絶対に出てこない。飛行機なんて大丈夫なわけがないと容易に想像ができる。
 日本には、まだペットが客室内に入れるサービスがない。せめて、私がそばにいて声をかけてあげれれば安心してくれると思うのだが、それは叶わない。できれば私が一緒に貨物室に乗りたいくらいだ。大型犬が入れるケージなら私も入れるだろう。一緒に積み込んでくれ!
 だけど、先日いいアドバイスをもらった。東京から高山に引っ越した友人からだ。
 その友人宅にも猫がいる。そしてその猫はケージにも絶対に入らない猫だったらしい。どうやったって入れることができないので、それまで、いろんなことを諦めてきた。だけど、いざ引っ越すとなると入れないわけにはいかない。困っていると、動物の話が聞けるという方を紹介してもらったらしい。
 その方が、友人宅の猫に話を聞いたところ、
「何も教えてくれないのが嫌だ」答えたそうだ。
 どこへ何をしに行くかを、とにかく話して欲しい、これまで説明がないから拒否してきたと言っているらしい。
「引っ越しの時は20分ほどおもちゃで遊んでくれたら、ケージに入るよ」とも。
 その通りにやったら、おもちゃで遊んだ後、決して入ることのなかったケージに、自ら入ったそうだ......!
 驚愕した。うちもまず病院に行く時などは、悟られないようにして、私も極力普通の顔をして、サッとケージに入れて連れて行ったりしていた。不安にさせてはいけないという配慮からだった。だけど、考えてみたら、何も知らずにどこかに連れて行かれるのは嫌だ。私だったら教えて欲しい。
 それぞれの猫によって性格も違うし、求めていることは別かもしれないけれど、納得した。そして何より人間の話がわかっているのだ、と嬉しくなった。
 その話を聞いてから、ケージを部屋に4つ並べ、ケージ内を快適に整え、おもちゃなど入れたり、おやつをあげたりしながら、
「これに入ったら、引越しするからね。ちょっと乗り物にいろいろ乗るけど、安全やし、着いたら素晴らしい楽園が待ってるで!楽しみやな!」
と、話し続けている。そして引越し当日は、十分におもちゃで遊んであげるつもり。
 さて、伝わっているだろうか。猫達の運命やいかに。



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