野菜畑の下で暮らす野ネズミの女性発明家は、偶然ある切手を目にしたことから、外の世界に関心をいだく。やがて、かつて飛行機で大西洋横断をはたしたパイロットネズミと出会い、飛行機による世界一周の冒険を計画する。必要な材料を集め、野ネズミ自ら飛行機をつくり、飛立つが……。
アメリア・エアハート
Amelia Earhart
1897年アメリカ·カンザス州生まれ。1932年、赤い「ロッキード·ヴェガ·5B」機に乗って、ノンストップで大西洋を横断した世界最初の女性パイロット。数々の飛行記録を打ち立て、アメリカの国民的ヒロインとなった。女性運動家としても有名で、女性パイロットの地位向上や権利のために懸命にたたかった。1937年、赤道上空世界一周飛行の途中に太平洋上で消息を絶つ。その生涯は様々な映画や舞台、楽曲になっている。
足跡

今作の魅力を、トーベン·クールマンさんに語ってもらいました。ぜひご覧ください。

©Sana Tornow
最新刊『アメリア 空飛ぶ野ネズミの世界一周』トーベン・クールマンさんインタビュー
大冒険へ踏み出した野ネズミと、
100年前に女性飛行士として活躍したアメリアの姿が重なった
今回、どんなネズミを主人公にするのかを考えたとき、わたしには野ネズミしか思いうかびませんでした。これまでのシリーズ4作品では町ネズミを主人公にしてきましたが、新しい物語の主人公は、コミュニティの役割からはみ出し、より大きな世界に向けた冒険へ一歩を踏み出すネズミです。その役割をになうのには野ネズミがぴったりだと思いました。
地下に住み、穴を掘ることしか頭にない野ネズミたちのコミュニティでは、空飛ぶネズミは白い目で見られてしまうことでしょう。このことと、100 年以上前に女性飛行士として活躍したアメリア・エアハートの生き様を、ユーモアをこめて重ね合わせようと思いました。
アメリアと同様、主人公の女性の野ネズミも何度も苦境に立たされますが、経験を重ねるなかで、多くの問題を軽やかに乗り越えていくようになります。この野ネズミが成長していく様は「じっくり考えれば、ほぼすべての問題は解決する」というわたし自身が大切にしている思いが反映されています。
また、本作のクライマックスで、主人公は怒り狂う野ネズミの群れからまんまと逃げ切ります。この場面にわたしは「何をいわれても自分をつらぬくこと」「野ネズミは飛べるようになる。そしてきみも、なりたいものすべてになれる」というメッセージをこめました。
今回の作品のテーマになった女性アメリア・エアハートをわたしがはじめて認識したのは、幼少期の頃です。飛行機の歴史に夢中になって、チャールズ・リンドバーグ、ライト兄弟とならんでアメリア・エアハートの存在を知りました。彼女の世界一周の試みが失敗に終わり、彼女が消息を絶った原因についてはさまざまな憶測があること。そしてその真相が未だ明らかでないことなどは耳にしていましたが、作品制作にあたって、あらためて彼女について調べるうちに、その偉大さをひしひしと感じるようになりました。
当時、パイロットとして飛とぶことは、技術面においていま以上に命の危険を伴いました。くわえて、アメリアは女性パイロットとしての地位を確立する活動を行っていました。とくに男性優位だったパイロットの世界で、彼女は身を切るような逆風のなか闘っていたのです。
近代的な考え方をもち、決然と自分の夢を追いかけた彼女の姿には、大きな尊敬の念をいだいています。

憧れのスミソニアン博物館での出会いから着想を得て……
10年前、わたしは子どもの頃からの夢だったワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館を訪問しました。その展示室には、チャールズ・リンドバーグの「スピリット オブ セントルイス号」が天井から吊されていました。そして、それほど目立たない場所にアメリア・エアハートの赤い「ロッキード・ヴェガ」も展示されており、本当に感激しました。
「ネズミの冒険」シリーズでは、スミソニアン博物館の下にネズミたちのための博物館があり、これは2作目の『アームストロング』で重要な役割をはたしています。今回の作品では、第1作目『リンドバーグ』の主人公のネズミとスミソニアン博物館との重要なシーンが登場します。

絵本づくりはひとつの冒険、
目的を達成するまでトライし続ける
「ネズミの冒険」シリーズは、飛行、宇宙飛行、あるいは時間旅行など、さまざまな夢の実現が描かれますが、これらの道のりは決して平坦ではありません。課題を見つけ、解決し、立ちはだかる困難を次々に克服する必要があるからです。
そしてこれは、わたし自身の姿勢とも重なります。自分を称するならば「不屈の人」かもしれません。目標に向かい、粘り強く、それが達成されるまでトライすることを楽しめるのです。
わたしは子どもの頃、ネズミたちと同様に、飛行機を発明するという夢をもっていました! でもその実現は、想像よりもむずかしかった。けれどそこから長い年月を経て、この絵本に登場するネズミのヒーローたちの手で、私の夢はかなえられました。
なにより、わたしにとっては新しい本をつくるプロジェクト自体、毎回が冒険なのです。目的は明確であっても、乗りこえるべきハードルは高い。物語を考えて、イラストを描く。そのようにして丸ごとひとつの世界をつくり上げなければならないのです。
わたしの中で燃えているこの小さな炎は、わたしの創造の原動力です。炎はわたしを落ち着かせてくれないので、わたしはつねに工作したり、物語を書いたり、絵を描いたりして、表現せずにはいられません。成し遂げたい目的がある限り、わたしのなかの炎は燃えつづけます。

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