
ピカソ、モネ、ロダン、プルースト、ヴェルディ......
主に19~20世紀に活躍した画家、彫刻家、作家、音楽家たち。
彼らが生まれた国や国籍、とりまく環境が
味覚や嗜好をつくり上げ、その結果、彼らは芸術と同じくらい
食べることにも、独自のセンスとこだわりを持っていた。
なかでも西洋人の彼らにとって、食後やお茶の時間のスイーツには
料理とはまた異なる、特別な思いがあったにちがいない。
あの芸術家はどんなスイーツの前で、極上の笑みを浮かべたのだろうか。


晩年を長編小説『失われた時を求めて』を書くことに費やしたプルーストは、カフェオレを愛飲していたという。
「朝のカフェオレの味は、われわれに晴天への漠とした希望をもたらす。」とこの代表作でも綴っており、さらに「クリーム状にプリーツがついて、かたまった牛乳のように見えた白磁のボウルで、カフェオレを飲んでいて、」と続く。この一節は、カフェオレが導く朝の目覚めを、プルーストの言葉で表したものだ。
カフェオレはご存知のとおり、フランス語でミルク入りコーヒーのこと。フランスでは、基本的に朝の飲み物で、午後や夜に飲む人は少ない。おまけに近年、コーヒーとミルクの組み合わせは胃に悪いとフランス人の間でささやかれていて、カフェオレを飲む人も減っているという。
今のパリのカフェで出しているミルク入りコーヒーは、カフェ・ア・ラ・クレームといい、略してカフェ・クレームと呼んでいる。これは、濃いエスプレッソコーヒーに蒸気で温めたミルクを注いだもの。細かいミルクの泡がふんわりとのったその様子から、フランス語でクリーム入りと表現したのだ。
プルーストの時代には、まだエスプレッソマシーンがなかったので、カフェオレというと、ドリップしたコーヒーと温めたミルクを合わせたものだった。だから、プルーストのカフェオレと、今のカフェ・クレームとでは、味も香りも、そして器に注がれた様子も、似て非なるものだったと思われる。
プルーストのお決まりの朝食は、このカフェオレとクロワッサンで、秘書兼家政婦のセレスト・アルバレが準備をした。セレストは、食の細いご主人様の要望に応えようと、カフェオレには特に細心の注意を払った。彼女は、コーヒー豆を17区のレヴィ通りにあった食料品店〈コルスレ〉で買い求めていた。この店は、当時、食通たちの間でよく知られた老舗だったと聞くが、今はもうない。だが、この通りには今でも、にぎやかな商店街があって、私がパリに住んでいたときに、よく食材を買いに行っていた馴染みのある通りだ。
セレストは〈コルスレ〉で強く煎ってもらったコーヒー豆をそのつど挽き、ドリップして淹れた。プルーストは、夜どおし執筆し、明け方に眠りにつく。起床時間は夕方の4時か5時頃だったので、その時間に合わせて、セレストが淹れたてのコーヒーと温めたミルクをサーヴした。タイミングが合わず、冷めたものを温め直したりしようものなら、プルーストはすぐに気づき、「セレスト、今日のコーヒーはよくないな」と冷淡な一言が返ってくるのだった。
10歳のときに喘息の発作に襲われ、生涯この病に悩まされたプルーストは、死の間際には、このカフェオレしか口にしなかったという。
プルーストはブルジョワの裕福な家庭で育ったので、贅沢な食材を使った食卓を楽しめる環境にあった。だが、食が細かった彼は、楽しみつつも常に危機感を感じていたことだろう。これらの豊かな食事をふたたび、同じように、おいしく味わうことができるだろうか、と。だから作家は、それらを脳裏に深く刻み込み、美味なるフレーズとして文学の中に散りばめたのだ。
食べたくとも食べられない人のほうが、いつでも食べられる人よりも、想像の世界で味わうことにたけていると思う。プルーストの詩的な食の描写を読むにつけ、そう思わずにはいられない。
プルーストのスイーツといえば、真っ先に思い出すのが、ぷくりと黄金色に焼けたマドレーヌだろう。紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、同じことを経験した遠い過去に導かれるというくだりは、あまりにも有名である。
そんなプルーストが、とりわけ好きだったというスイーツは、いちごとフロマージュ・ア・ラ・クレームだ。フロマージュ・ア・ラ・クレームは、ヨーグルトに似た純白のフレッシュチーズで、これにいちごを入れて、つぶしていく様子を、プルーストは「ゆっくりと薔薇色に染まっていく」と、幾度となく表現している。
ゆっくりとマーブル模様を描き、折り重なっていく白と薔薇色。プルーストはこのスイーツを文章にする度に、いちごとフロマージュ・ア・ラ・クレームに思いをはせ、甘酸っぱくてひんやりとした感覚を、ひとり密かに楽しんでいたに違いない。
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材 料 (2人分)
ヨーグルト〈無糖〉...450g
生クリーム(乳脂肪のもの)...200cc
グラニュー糖...10gくらい
いちご...10粒
グラニュー糖...適量
つくり方
1. ボウルにヨーグルト、生クリーム、グラニュー糖を入れ、泡立て器でよく混ぜ合わせる。
2. ザルにキッチンペーパーをすき間ができないように敷き、ザルの下に別のボウルを置く。
3. 2のザルの中に1を流し入れ、ラップをして、冷蔵庫に2時間以上入れ、水分を切る。
4. 水分が切れたら、ボウルに戻し、なめらかになるまで再び泡立て器で混ぜる。
5. いちごはよく洗ってへたをとり、キッチンペーパーで水気をよくふく。
6粒は厚さ5mmの輪切りにし、4粒は縦に8等分に切る。
6. 器に4を盛り、5を散らして、好みでグラニュー糖をふりかける。
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