
ピカソ、モネ、ロダン、プルースト、ヴェルディ......
主に19~20世紀に活躍した画家、彫刻家、作家、音楽家たち。
彼らが生まれた国や国籍、とりまく環境が
味覚や嗜好をつくり上げ、その結果、彼らは芸術と同じくらい
食べることにも、独自のセンスとこだわりを持っていた。
なかでも西洋人の彼らにとって、食後やお茶の時間のスイーツには
料理とはまた異なる、特別な思いがあったにちがいない。
あの芸術家はどんなスイーツの前で、極上の笑みを浮かべたのだろうか。


ロダンは、世界的に有名な「考える人」や「地獄の門」「カレーの市民」をつくった彫刻家である。
19世紀の彫刻といえば、建築物の装飾や貴族の邸宅に置くオブジェといった、半ば職人的な仕事の領域であった。しかし、ロダンはその彫刻に魂を吹き込み、芸術の域にまで高めた人物だ。
顔の周りに髭をたっぷりと蓄えた学者風のおもざしに、肉厚で労働者風の体格のロダン。彼は無色透明でオレンジの香りのするフランスのリキュール、Cointreau〈コワントロー〉を好んで飲んでいたというが、スイーツというイメージからはほど遠い。
ロダンはパリの貧しい家の長男として生まれた。警察の書記係を務める父は、息子の勉学と出世にたいそう期待した。しかし当の本人は、読み書きも算術もできず、好きな地理や歴史も、極度の近眼で黒板の文字が見えなというハンディから、さんざんな成績だったという。
幼いロダンは、勉強よりも絵が描きたくてたまらなかったようだ。もちろん画材など買い与えられる境遇ではなかったので、母親が食料品店や八百屋でもらってくるチーズやジャガイモの包み紙などに、こっそりとクレヨンで描いた。このクレヨンをプレゼントしたのは、伯母のテレーズだった。伯母は画家の家政婦兼モデルをしており、かわいい甥のために、こっそりと画家のアトリエから借用してきたのである。
現実的な父親は、息子が芸術の道に進むこと、ましてや美術学校に入ることに大反対した。そんなロダンに、無料で学べるプティット・エコール〈工芸実技学校〉を薦めてくれたのは、2番目の姉のマリーだった。この姉は後に、恋人に裏切られ、若くして亡くなっている。
家族の中で伯母と姉だけが、芸術の道へ進みたいと望むロダンの後押しをしてくれたのだった。
ロダンは、さらにその生涯において、運命というべき2人の女性と出会う。1人はローズ・ブーレという、ロレーヌ地方生まれのお針子。もう1人は美しき愛弟子、女性彫刻家のカミーユ・クローデルだ。
ローズとは、ロダンが20代のときから一緒に暮らし、一児をもうけたが、ローズが亡くなる直前まで結婚はしなかった。それでもローズは、ロダンの身の周りの世話をし、献身的に尽くした。縫い物をして家計を助け、貧しいながらもロダンの好物をこしらえたり、大好きなコワントローを買っておいたりもした。
一方、ロダンの愛弟子であるカミーユは、ロダンの仕事面をサポートし、共に芸術を深め合う。だが、ロダンに恋するあまりローズに嫉妬して、正気を失い、死ぬまでまともな精神状態はとり戻せなかったという。
彼女たちはそれぞれに、ロダンの作品のモデルを務めている。
モデルになる女性たちは、ロダンにとても気を使ったそうだ。製作中、厳しくポーズを要求する彼の創作意欲にのみ込まれつつも、心のどこかで崇拝していたからだろうか。
ブルターニュ地方のベル・イルに住むオーストラリア人画家ジョン=ピーター・ルッセルの妻マリアナも、ロダンのモデルの1人だった。
ロダンはマリアナをモデルにするために、夫妻の住むベル・イルに何度か滞在していた。そのときロダンは、マリアナがつくったお菓子を食べ、いたく感激したという。
「マダム・ルッセルのつくられるお菓子を食べたとき、お菓子のおいしさとマダムの美しさで、私は喜びが2倍になる。まるで美しい女神がお菓子をつくるようだ」とそのおいしさと彼女の美しさを讃えた。
マリアナはそんなロダンを喜ばせようとしたのであろう、手づくりのレモンカードとブラックベリーのジャム、そして手紙を入れた小包を送っている。その手紙には「レモンカードは小菓子につけて食べてくださいな」という一文が書き添えられていた。
レモンカードは、鮮やかな黄色をしたレモンジャムのようなもので、卵が入るのであまり日持ちがしない。ブラックベリーのジャムと違って、フランスではあまり馴染みのない食べ物だ。だからマリアナはロダンが食べるとき戸惑わないようにと、この一文を書き添えたのであろう。もしこの一文がなかったら、ロダンはレモンカードをどのように食したであろうか......それはそれでちょっと興味深い話である。
60歳を過ぎてようやく地位と名声を手にした巨匠ロダンは、手帳に綴っている。
〈女性は、我々の時代においても、まだ最高の作品である〉と。
どの時代にも、お菓子よりも甘い心で女性たちに支えられたであろうロダン。彼が手帳に綴った言葉の裏には、芸術家として女性の美を賛美するとともに、愛してくれた女性たちに感謝の念も込めていたのではないだろうか......。
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レモンカードの材料 (つくりやすい分量)
レモン汁...150cc(約2個分)
砂糖...250g
無塩バター...50g
卵...3個
サブレの材料 (直径3.5cmの花形 約80枚分)
無塩バター...100g
粉砂糖...70~80g
塩...2つまみ
卵黄...1個分
生クリームまたは牛乳...大さじ1
薄力粉...200g
レモンカードのつくり方
1. ボウルに卵を割り、泡立て器でよくといておく。
2. 鍋にレモン汁、砂糖、バターを入れ、弱火にかけながら、木べらでゆっくりと混ぜ合わせる。
3. 2が沸騰し、砂糖が完全にとけたら火を止め、ふつふつと沸騰した泡がなくなるまで
そのまま放置する。
4. 3を少しずつ1に加えながら、泡立て器でよく混ぜ合わせる。
5. 4が完全に混ざったら、鍋に戻し、再び弱火にかけ、カスタードクリームをつくる要領で、
木べらで絶えずかき混ぜる。
6. 5にとろみがついたら火からおろし、熱いうちに、煮沸消毒したビンに入れて、ふたを閉める。
サブレのつくり方
1. ボウルにバターを入れ、やわらかくなるまで泡立て器ですり混ぜる。
2. 1に粉砂糖、塩、卵黄、生クリームまたは牛乳を順に加え、そのつどよく混ぜ合わせる。
3. 2に薄力粉をふるいながら加え、ゴムべらでサックリと粉っぽさがなくなるまで
混ぜ合わせ、1つにまとめる。
4. 3をラップで包み、冷蔵庫で約30分ねかす。
5. 生地を冷蔵庫からとり出し、打ち粉(分量外/薄力粉でよい)をふった台の上に4をのせ、
めん棒で厚さ3~4mmにのばし、クッキー型で抜く。
6. 5をトレイやバットに重ならないようにのせ、冷蔵庫に約10分入れる。
7. 6を冷蔵庫からとり出し、クッキングシートを敷いた天板にすきまをあけて並べ、
180℃に温めたオーブンで10~15分焼く。
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